AI、核融合、量子コンピューター、自動運転。これからの社会を大きく変えるかもしれない技術を眺めていると、私は今でもわくわくする。
特に核融合は、私にとってまさに「夢のエネルギー」だ。早く実用化してほしいと心から思っている。AIや自動運転も、私たちの生活を想像以上に変えていくかもしれない。
ただ、その中でどの分野が大きく育ち、最終的にどの企業が巨額の利益を出すのか。私にはわからない。
10年後、AIが主役かもしれない。核融合が大きな産業になるかもしれない。量子コンピューターに思いもよらない用途が生まれるかもしれない。自動運転が人々の移動を一変させるかもしれない。あるいは、今はまだ私が名前も知らない分野かもしれない。
それでも私は、次の勝者を必死に当てにいかなくていいと思っている。
理由は、私が積み立てているような幅広い株式インデックスには、成長した企業が存在感を増し、新しい企業も条件を満たせば入ってくる仕組みがあるからだ。私はこれを、自分の中で「企業の入れ替え戦」と考えている。
私がインデックス投資で一番気に入っているのは「入れ替え戦」
たとえば、今はまだ小さなAI企業があるとしよう。これから数年で世界中の企業に使われるサービスを生み、実際に大きな利益を出し、企業価値も何倍にも成長したとする。
私はその会社を今、知っている必要がない。社長の名前も、研究内容も、株価の将来も予測できない。
その会社が上場し、指数の採用条件を満たす規模に育てば、S&P500や全世界株式などの指数に組み入れられる可能性がある。すでに指数に入っている企業なら、時価総額が大きくなるにつれて指数内の存在感が増していく。
つまり、未来の勝者が生まれたとき、私がその名前を予想して個別株を買わなくても、保有するインデックスを通じてその企業の成長に参加する道がある。
これはAIだけの話ではない。
- 核融合が商用化され、発電や関連設備で大きな利益を出す上場企業が現れる。
- 量子コンピューターが実用段階に入り、社会に欠かせないサービスを提供する企業が育つ。
- 自動運転が当たり前になり、車両・半導体・運行サービスなどで利益を積み上げる企業が生まれる。
どれが勝つのか、今はわからない。複数が同時に大きくなるかもしれない。
私は、利益を生み、企業価値を高めた会社が、市場を代表する存在として指数の中でも大きくなっていくことに期待している。ひとつの産業を当てるのではなく、成長企業が入れ替わっていく市場そのものを保有するイメージだ。
実際には、指数の中で二つのことが起こる
ここは少しだけ仕組みを整理したい。「インデックスは成長企業を自動で買ってくれる」という私の感覚は、おおむね次の二つに分けられる。
① すでに入っている企業は、成長すると比率が高まる
S&P500や一般的な全米株式・全世界株式の指数は、基本的に浮動株調整後の時価総額を基に構成比率を決める。
たとえばある企業の株価が上昇し、ほかの企業に比べて市場価値が大きくなれば、その企業が指数に占める割合も大きくなる。指数連動ファンドの保有者は、すでにその企業を含んでいれば、成長に伴う値上がりの恩恵を受けられる。
何より、私は「次はこの企業に買い替えよう」と毎回判断しなくていい。これがありがたい。
② まだ入っていない企業も、条件を満たせば新たに採用される
一方、指数にまだ採用されていない企業が大きく成長した場合には、時価総額、流動性、上場市場、収益性など、それぞれの指数が定める条件に従って新たに組み入れられることがある。
反対に、企業が小さくなったり採用条件を満たさなくなったりすれば、比率が下がることもあれば、指数から外れることもある。
「入れ替え戦」は比喩だが、構成銘柄の追加・削除や比率変更は本当に行われている。たとえば指数算出会社MSCIは、2026年8月の指数見直しで、全世界の大型・中型・小型株を含むMSCI
ACWI
IMIについて184銘柄を追加し、279銘柄を削除すると発表した。これは「今の市場を反映するため、構成が変わる」具体例だ。MSCIの発表
もちろん、上場した成功企業が必ず、しかも最初から、すべての指数に入るわけではない。指数の採用前に起きた株価上昇を、後からさかのぼって受け取ることもできない。それでも、次世代の有力企業を自分一人で選び続けなくてよいことに、私は大きな価値を感じる。
S&P500・VTI・オルカンで「入れ替え戦」の範囲は違う
ここで大事なのは、どの指数でも同じ企業が入るわけではないことだ。
| 投資先の例 | おおまかな対象 | 未来の勝者を取り込む仕組みと注意点 |
|---|---|---|
| S&P500連動ファンド | 米国の代表的な大型企業 | 採用・除外と時価総額に応じた比率変化がある。採用には規模や流動性に加え、収益性などの条件もある。米国外の企業は原則対象外。 |
| VTI・楽天VTI | 米国の株式市場を幅広く対象 | 大企業だけでなく中小型株も広く含めるため、新しい成長企業を比較的早い段階から保有できる可能性がある。ただし米国株中心。 |
| オルカンなどの全世界株式 | 日本・米国・欧州・新興国など、世界の主要市場 | 国をまたいで成長企業を取り込む。一般的なMSCI ACWI連動型は大型・中型株が中心で、世界中の全上場企業を保有するわけではない。 |
S&P500は米国の大型企業の指数で、採用銘柄は定期的な見直しなどで変わる。S&P
Dow Jones Indicesの指数説明
VTIは米国市場を広く対象とするETFだ。VanguardのVTI商品情報
オルカンの代表的な連動対象であるMSCI
ACWIは、先進国・新興国の大型・中型株で構成され、対象市場の投資可能な株式時価総額のおよそ85%をカバーする。MSCI
ACWIの概要
つまり、米国企業が未来の主役ならS&P500やVTIにも恩恵が期待できる。一方、主役が米国外から現れた場合は、全世界株式の方がその企業を取り込む余地がある。どの指数を保有するかで、参加できる「入れ替え戦」の範囲は変わる。
「利益が伸びたら自動採用」と単純には言えない。それでも私の考えは変わらない
私の関心の中心は、やはり企業が実際に利益を生み、大きく育つかどうかにある。
ただし正確には、インデックスは「利益額の大きい順のランキング」ではない。多くの指数で大きな役割を果たすのは、投資家がつけた株価と発行株式数に基づく時価総額だ。S&P500には収益性の条件がある一方、広い市場を対象とする指数には赤字企業が含まれることもある。S&Pの指数算出方法の解説
利益が伸びても株価が必ず上がるわけではないし、期待だけで株価が先行することもある。反対に、利益を継続的に成長させて企業価値を大きくした会社は、長い時間の中で指数の中でも重要な存在になり得る。
私はその企業を先回りで当てる才能を、自分の資産形成の前提にしたくない。
これが言いたいことだ。
2018年、NVIDIAに注目していた私。それでも株は買わなかった
このブログでは2018年3月にNVIDIAを取り上げている。当時、私が主に注目していたのは自動運転の将来性だった。
しかし、私はNVIDIA株を一度も買っていない。
2018年の自分が、後にAI向け半導体がここまで重要になることを正確に予測していたわけでもない。
「当時から知っていた」「面白い会社だと思った」と、「買って、長く持ち続け、利益を得た」の間には大きな隔たりがある。個別株の勝者を見つけるのは、本当に難しい。
ただ、私が保有する楽天VTIのような広い米国株式インデックスには、NVIDIAのような市場で大きな存在となった会社も含まれる。私自身はNVIDIAを直接買わなくても、市場全体を持つことで、その成長の一部に参加できている。
私には、これがインデックス投資のいちばんわかりやすい魅力だ。2018年のNVIDIA記事とその後の検証
半導体のSOXLでは、約1,064万円の「含み損益の振れ幅」も経験した
もちろん私は、個別企業や一つの産業に賭ける面白さを知らないわけではない。半導体関連のレバレッジ型ETF、SOXLも保有してきた。
その間に、評価損益は一時約964万円の含み益から、約100万円の含み損になるところまで変動した。差は約1,064万円。これは保有中の評価損益の振れ幅であり、実現した損益ではない。
半導体産業が将来伸びると考えていても、その分野に集中した商品を大きな割合で持つには、別の難しさがある。ましてSOXLは日次の指数変動に対して3倍の値動きを目指す商品で、長期成績が単純に3倍になるわけではない。SOXLの実体験を振り返った記事
この経験も、家族の資産形成の中心は、より幅広いインデックスに置きたいと考える理由の一つになっている。
人気のテーマ型投信を後から追うより、最初から市場に参加していたい
AIが話題になるとAI関連の投資信託、次に量子コンピューターが話題になれば量子関連の投資信託……。そのとき注目される産業に絞った商品は、次々と登場する。
もちろん、テーマ型投信にも優れた商品はあり得る。アクティブファンドでも運用者は銘柄を入れ替えられるので、「一度外したら永遠に取り返せない」とまでは思わない。
それでも私には、ニュースで人気になってからその産業を買いに行くことに、どこか抵抗がある。期待が先に株価へ織り込まれているかもしれないし、次の主役が別の分野へ移るかもしれない。何より毎回「これからは何の投信を買うか」を判断し続けることになる。
私はその代わりに、今から幅広い市場に参加しておき、次の主役が誰になっても、指数のルールと企業価値の変化に任せたい。未来の技術をあれこれ予想することは楽しみたいが、家族のお金を増やすために、その予想を必ず当てる必要はないと思っている。
だから2018年からの積立を、今も続けている
私は2018年8月、楽天VTI・楽天VYMの積立を合計月10万円から始めた。途中で金額を変えず、2023年12月まで月10万円を継続。そして2024年1月から月40万円に増額した。
2026年現在の自動積立は、新NISAが月30万円、特定口座が月10万円の合計40万円だ。積立の中心は楽天VTIで、高配当株式を対象にした楽天VYMも組み合わせている。なお、楽天VYMは高配当株に絞った商品なので、ここまで説明した「市場全体の入れ替え戦」という考え方は、特に楽天VTIの部分によく当てはまる。
私は、核融合や量子コンピューターの関連株を買った経験はないし、今特に追いかけている個別企業もない。でも核融合が実用化して、生活が大きく変わる未来はぜひ見てみたい。以前、街を走る無人タクシーを実際に目にしたときの驚きも、今でも忘れられない。自動運転の実体験を書いた記事
個別株への投資や新技術の研究を否定するつもりはない。ただ、私は今後も「未来の勝者を予想する楽しみ」と「長期の資産形成」は切り分けていきたい。
まとめ|次の主役を当てなくても、主役の交代に参加できる
10年後に世界を変えているのは、AIなのか、核融合なのか、量子コンピューターなのか、自動運転なのか。あるいは、まだ名前も知らない技術かもしれない。
それぞれの分野で、最後にどの企業が大きな利益を上げるかはもっとわからない。
だから私は、最初からたった一社・一分野に賭けて当てにいくことを、資産形成の中心にはしない。利益を生み、企業価値を高めた会社が市場の中心に近づき、指数の構成や比率にも反映されていく。そんな「企業の入れ替え戦」へ長く参加することを選んでいる。
もちろんインデックスも下落するし、対象市場以外の勝者を取り込めないこともある。新しく入った企業の過去の値上がりを後から受け取ることもできない。
それでも、未来を全部予測できなくていい。私はそれが、インデックス投資を続ける大きな理由だ。
参考資料
- S&P
Dow Jones Indices:S&P500の構成・銘柄入れ替え - S&P
Dow Jones Indices:指数の採用条件・時価総額による重み付け - Vanguard:VTIの公式商品情報
- MSCI:MSCI
ACWI指数の対象範囲 - MSCI:2026年8月の指数見直し
※この記事は私自身の経験と投資についての考え方をまとめたものです。特定の金融商品への投資を勧誘するものではなく、将来の投資成果を保証するものでもありません。

