先日、日本とアメリカの1人当たりGDPを25年間で比較した記事を書いた。調べれば調べるほど、成熟した先進国であるアメリカの経済成長の強さが目に入った。
ただ、その後に気になったことがある。日本企業は海外でも稼いでいるのに、日本国内だけで生み出された付加価値を示すGDPで日本経済を評価しきれるのだろうか。
そこで今回はGDPに加え、GNI(国民総所得)を調べてみた。日本・アメリカだけではなく、中国、ドイツ、フランス、イタリア、インド、ロシア、サウジアラビア、UAE(ドバイを含む)など18か国を比較する。さらに、GNI総額と1人当たりGNIの世界順位も確認した。
先に一番驚いたことを書いておく。2024年、日本のGNIはGDPを約6.1%上回った。一方、アメリカは約1.0%下回った。ところが、GNIの世界順位を調べると、アメリカは総額1位・1人当たり5位、日本は総額4位・1人当たり32位だった。日本の良さとアメリカの強さが、同時に見える結果だった。
GDPとGNI、昔のGNPは何が違うのか
GDP(国内総生産)は、その国の「国内」で一定期間に新しく生み出された付加価値の合計。これに対し、GNI(国民総所得)は、国内の生産による所得に加えて、海外との間で受け払いした所得の純額を反映する。
GNI=GDP+海外からの第一次所得の受取−海外への第一次所得の支払
第一次所得には、雇用者報酬、利子・配当、企業の利益に関係する所得などが含まれる。注意したいのは、海外子会社の売上高をそのままGNIに足すわけではないという点だ。国民経済計算のルールに従って、居住者に帰属する所得を考える。
かつて使われたGNP(国民総生産)は、現在の国民経済計算では同様の所得概念を持つGNIという指標に置き換わっている。内閣府もGDPとGNI(GNP)の違いを解説している。
2024年の18か国比較――日本はGNIがGDPより約6.1%大きい
まずは、GDPとGNIの差をGDPに対する割合で表してみた。ここでは世界銀行の2024年の名目値を使い、どの国も同じ年、同じ米ドル基準で比較している。

日本は約+6.1%、ドイツ約+3.4%、フランス約+1.9%。UAEは約+2.9%、サウジアラビアは約+0.7%だった。一方でアメリカ約−1.0%、中国約−0.7%、インド約−1.3%、ロシア約−1.3%という結果になった。
このグラフは「海外から受け取った所得が多い国ほど優秀」という順位ではない。海外への支払も差し引いた純額だからだ。ただ、日本が海外の投資や事業から所得を受け取る国になっていることは、GDPだけを見ていると見落としやすい。
GNI総額は日本4位、アメリカ1位。1人当たりではどうなる?
ここで、私自身が最も知りたくなった世界順位を調べた。世界銀行に2024年の数値がある198の国・地域を対象に、地域合計などを除いて順位を付けたものが次の表だ。
| 国・地域 | GNI総額の順位 | GNI総額(兆ドル) | 1人当たり順位 | 1人当たりGNI(ドル) |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | 1位 | 28.99 | 5位 | 82,910 |
| 中国 | 2位 | 18.60 | 74位 | 13,660 |
| ドイツ | 3位 | 4.85 | 19位 | 55,090 |
| 日本 | 4位 | 4.45 | 32位 | 37,170 |
| インド | 5位 | 3.71 | 151位 | 2,550 |
| イギリス | 6位 | 3.66 | 25位 | 49,320 |
| フランス | 7位 | 3.22 | 28位 | 45,160 |
| イタリア | 8位 | 2.38 | 31位 | 38,640 |
| ロシア | 10位 | 2.16 | 73位 | 15,330 |
| 韓国 | 12位 | 1.90 | 35位 | 36,750 |
| オーストラリア | 15位 | 1.70 | 14位 | 62,680 |
| インドネシア | 16位 | 1.36 | 126位 | 4,920 |
| サウジアラビア | 18位 | 1.26 | 38位 | 35,990 |
| スイス | 20位 | 0.94 | 3位 | 99,920 |
| UAE(ドバイを含む) | 25位 | 0.57 | 24位 | 51,550 |
| シンガポール | 32位 | 0.47 | 10位 | 75,820 |
| アイルランド | 35位 | 0.46 | 8位 | 80,650 |
| ルクセンブルク | 87位 | 0.061 | 4位 | 84,650 |
注:GNI総額は「GNI (current US$)」で通常の名目米ドル換算。1人当たりGNIは世界銀行が公表する「GNI per capita, Atlas method (current US$)」を使用。Atlas方式は当年と過去2年の為替相場などを用いて変動をならすため、総額の数字を単純に人口で割ったものとは完全には一致しない。どちらも2024年の値。統計改定や対象範囲によって順位は変わる。
日本はGNI総額で4位だ。GDPと同様に、アメリカ、中国、ドイツに次ぐ大きさだった。インドは5位、イギリス6位、フランス7位。人口の多い国や経済規模の大きい国が上位に並ぶ。
ところが、1人当たりにすると様子が変わる。アメリカは82,910ドルで5位、日本は37,170ドルで32位。約2.2倍の差がある。日本のGNIがGDPを約6.1%上回ることは確かに強みだが、それを加味しても、アメリカとの1人当たりの水準差がなくなるわけではなかった。
中国は総額2位でも1人当たり74位(13,660ドル)、インドは総額5位でも151位(2,550ドル)。巨大な人口による経済規模と、1人当たりの所得水準は別々に見るべきだと実感する。
1人当たりGNIの上位10か国・地域
| 順位 | 国・地域 | 1人当たりGNI(ドル) |
|---|---|---|
| 1位 | バミューダ | 139,370 |
| 2位 | ノルウェー | 100,030 |
| 3位 | スイス | 99,920 |
| 4位 | ルクセンブルク | 84,650 |
| 5位 | アメリカ | 82,910 |
| 6位 | ケイマン諸島 | 81,920 |
| 7位 | アイスランド | 80,910 |
| 8位 | アイルランド | 80,650 |
| 9位 | カタール | 76,570 |
| 10位 | シンガポール | 75,820 |
バミューダやケイマン諸島といった小規模な地域も含まれる。順位を「独立国のみ」に限定したり、為替換算を変えたりすれば結果も変わる。また、GNIは平均年収でも平均手取りでもなく、物価や所得格差まで示す指標ではない。
25年間の変化――日本のGNIとGDPの差は拡大した
2024年だけの特殊な結果なのか確認するため、2000〜2024年の25年分の推移も見た。日本・アメリカ・ドイツ・フランス・中国の5か国を取り出している。

日本は2000年の約+1.4%から、2024年には約+6.1%まで拡大した。一方、アメリカは2000年の約+1.3%から、2024年には約−1.0%になった。年による増減はあるが、長期で見れば両国の違いがはっきりする。
私は、この数字に日本経済のもう一つの姿を感じた。国内の成長だけではなく、海外に積み上げた投資や事業から得る所得も日本の経済にとって重要になっている。ただし、その所得が家計の賃金や国内の消費にそのまま回るわけではない。だからこそ、GDPとGNIの両方を見る必要があると思う。
金額で見るともっと意外――日本はプラス約2,550億ドル、米国はマイナス約3,046億ドル
割合だけでなく、GNIからGDPを引いた金額も比較した。2024年の日本は約+2,550億ドル、ドイツは約+1,614億ドル。一方、米国は約−3,046億ドル、中国は約−1,288億ドルだった。

ここで気をつけたいのは、アメリカ企業が海外で稼げないという意味ではないことだ。アメリカの巨大企業にも海外に事業・収益を持つ企業は多い。GNIとGDPの差は、外国の投資家などへ支払う所得も差し引いた国全体の純額であり、米国企業の海外売上高や海外利益の合計を表していない。
国民経済計算上の純所得がマイナスであっても、それだけで米国株の魅力が低いと判断するのは早計だと考える。
アイルランドとシンガポールは、なぜ差が大きいのか
今回の18か国比較で、アイルランドは約−24.9%、シンガポールは約−17.3%、ルクセンブルクは約−34.6%だった。多国籍企業や国際金融の活動が大きい国では、国内で計上される生産と居住者に帰属する所得に大きな違いが生じることがある。
アイルランドの中央統計局は、GDPや通常のGNIだけでは実態をつかみにくいことから、グローバル化による特定の影響を調整した修正GNI(GNI*)も公表している。2024年の修正GNIはGDPの約57%だった。アイルランド中央統計局の2024年資料による。
この例を見ると、GDPやGNIの数字をそのまま「国民の豊かさ」や「株式投資の魅力」に置き換える危うさもわかる。
この結果を見ても、私が米国株を資産運用の主軸に置く理由
日本のGNIがGDPを約6.1%上回る。これは私にとって、日本経済の見方を少し広げてくれる結果だった。日本企業や投資家が海外で築いてきた収益基盤を、きちんと評価したい。
ただし、日本のGNIがGDPを上回ることと、今後の日本株のリターンがアメリカ株より高いことは別問題だ。
今回のGNI総額はアメリカが約29.0兆ドル、日本が約4.45兆ドルで約6.5倍。1人当たりGNIでもアメリカは約2.2倍だ。さらに、前回の1人当たり実質GDPの25年比較では、アメリカが高い水準から成長してきたことも確認した。
私が米国株を中心にしてきた理由は、GNIとGDPの差のプラス・マイナスではない。経済規模、企業の競争力、生産性、技術革新、資本市場の厚みを総合的に評価しているからだ。もちろん株価には割高・割安があり、経済成長だけで将来の投資リターンが保証されるわけではない。
すでに私は米国株を十分に保有している。これまで積み上げた米国株を売るつもりはないが、新たに米国株を購入するペースは以前より落としている。今後は新規資金をオルカンなどの全世界株式へ少しずつ振り向け、米国の成長も取り込みながら地域の集中リスクを管理したい。
日本株は、私の資産の一部としてサテライトで保有している。保有方針については日本株5銘柄とサテライト投資をまとめた記事にも書いた。日本経済がもっと元気になってほしいという気持ちは強いが、現時点では日本株を資産運用の中心に据える考えではない。
新しいデータを知るたびに、投資哲学をころころ変える必要はないと思っている。一方で、もともとの考えに都合のいい数字だけを集めるのも避けたい。今回のGNIは、日本の強みを再認識できたという意味で、調べてよかった。
まとめ――日本の海外所得は強み。それでも米国経済の大きさと所得水準は際立つ
今回の調査でわかったのは、次のことだった。
- GDPは国内で生み出された付加価値、GNIは海外との第一次所得の純額も反映する指標。
- 2024年、日本のGNIはGDPより約6.1%大きく、アメリカは約1.0%小さかった。
- 日本のGNIとGDPの差は、2000年の約1.4%から2024年の約6.1%へ拡大した。
- GNI総額ランキングはアメリカ1位、中国2位、ドイツ3位、日本4位。
- 1人当たりGNIはアメリカ5位(82,910ドル)、日本32位(37,170ドル)だった。
- GDP・GNI・株価のリターンはそれぞれ異なる指標であり、どれか一つだけでは投資先を決められない。
日本経済をGDPだけで評価するのはもったいない。ただし、海外で稼いでいるからといって国内の生産性や所得の課題が消えるわけでもない。
日本の強みは認める。それでも米国株を資産の中心に保有し、新しい資金で世界分散を進める。今回のデータを見たうえでも、これが私の現在の投資方針だ。
参考データ・集計条件
- 世界銀行:GDP(名目、米ドル)NY.GDP.MKTP.CD
- 世界銀行:GNI(名目、米ドル)NY.GNP.MKTP.CD
- 世界銀行:1人当たりGNI(Atlas方式)NY.GNP.PCAP.CD
- 内閣府:GDPとGNI(GNP)の違い
- アイルランド中央統計局:GNI*(2024年)
集計は世界銀行WDIの2024暦年データを使用し、GNI総額と1人当たりGNIの順位は2024年の値を取得できる198の国・地域について地域合計を除外して算出。2026年10月時点のデータに基づくため、その後の改定で順位・数値が変動する場合がある。GDP・GNIの比較は名目値であり、前回記事の実質1人当たりGDPとは単位・目的が異なる。投資判断は自己責任でお願いします。
